手軽でおいしい食べ物が溢れるいま、私たちは「自分のために何を食べるべきか」を多くの選択肢の中から選び取る必要が出てきました。いまの満足のために食べるのか、健康のために食べるのか、その両方が一致していたら、これほどうれしいことはありません。

朝のひとくちめは、「野菜」ととことん向き合い、魅力やおもしろさを見つけ出し、野菜を真面目な気持ちで選ぶものから、気持ちよく楽しいものへ変えていきます。楽しく食べていれば、栄養は後からついてくるものです。

朝、玄関を開けて思わず「いってきます！」と言いたくなるとき、きっと心の中は希望や挑戦に満ちているはずです。元気な朝も、少し元気のない朝も、食べもののおいしさや温度を力に変えて、それぞれの持ち場での「活躍」に変えていってほしいのです。

「わたしたち」の中には、あらゆるアレルギー・宗教・思想を持つ人々も含まれます。食べられるものが用意されているということは「愛情・敬意」の表現の一つだと思うのです。

ちょっとした切り方や加熱方法の違いで驚くほど変化する野菜のおいしさを目の当たりにする瞬間は、初めて蝉の羽化を発見したときのようなよろこびを与えてくれます。野菜を選び、触り、ちぎって切って調理していく過程は、原理原則に従い成長した美しさを再確認し、手の触感を通じて自分の感覚を取り戻してくれます。そんな楽しさとともに、野菜のもつ「複雑な甘味」「食感の多様さ」「香りの芳醇さ」「彩りの豊かさ」で、すでにここにある暮らしの豊かさを最大限に感じてもらいたいのです。

朝のひとくちめ 代表 田野実 温代
日本調理科学会会員
広島県東広島市豊栄町乃美2295-1